私の浅草(萬盛庵物語) 沢村貞子 著

むかし、浅草観音音堂の裏手一帯は、奥山と呼ばれていた。私が子供のころ、そこに萬盛庵という大きなそば屋さんがあった。大通りから観音さまへ抜ける路の角にある、船坂塀にそった冠木門から、きれいな庭が見えた。三百坪はたっぷりあると思われる敷地に母屋をとりまいて、いくつかのしゃれた離れが建っていた。その、部屋から部屋をつなぐ小道沿いのじゃり浜の、ところどころに、大きなつくばいがあって、いつも、冷たいきれいな水が溢れていた。格好のいい松や紅葉、つげ、慎のあいだには、梅、桃、椿、牡丹から藤まで、四季おりおりの花が咲き乱れ、毎日のように脚絆姿の庭師が入っていたように思う。店に働く人たちの、キリリとした身仕舞いのよさにも、老舗の伝統が感じられた。食べもの屋らしく、白粉気のない女中さんの、小ぶりの銀杏返し、前かけにかいがいしいたすき姿、とりわけ、わけへだてない、行儀のいい客扱いは評判であった。「なんてったって萬盛庵さ、主人のお仕込みが違わぁな」浅草の人たちは、それをわがことのように誇りにしていた。

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